副業型キャリア=“診療だけじゃない働き方”
かつて歯科医師のキャリアといえば、「勤務 → 開業」の一本道が定番でした。
しかし今の若手歯科医師たちは、“診療だけ”にこだわらず、複数の活動を並行して行うキャリアスタイルを選ぶ人が増えています。
これがいわゆる「副業型キャリア」です。
目次
社会全体で“副業容認”の流れが強まっている
政府による“副業・兼業”の推進政策
日本政府は2018年から「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を策定し、企業に対して副業解禁を呼びかけています。背景には以下のような狙いがあります:
-
労働力不足の解消
→ 少子高齢化による人手不足を補う手段として、多様な働き方を認める必要がある。 -
イノベーションの促進
→ 異業種・異分野の経験を持つ人材が増えることで、新しい発想や技術が生まれやすくなる。 -
自律的キャリア形成の支援
→ 終身雇用が崩れる中で、「個人が自分でキャリアを築く」ことを前提とした社会づくりへ。
これにより、企業は就業規則で「副業禁止」としていた規定を見直すよう要請され、実際に多くの企業が規定を改定する流れが生まれました。
大企業でも“副業OK”が当たり前に
政府の方針に呼応して、以下のような有名企業も副業を解禁・推奨するようになりました。
- パナソニック
- 富士通
- サントリー
- リクルート
- ユニリーバ
- ソフトバンク など
これらの企業では、副業を「個人の成長につながるもの」として評価し、社外での経験を社内に還元してもらうというスタンスを取っています。
働く個人の“副業志向”の高まり
副業に対する個人の意識も変化しています。最近の調査では:
- 20〜30代の会社員の約半数が「副業に興味がある」と回答
- 特にZ世代(1990年代後半〜2000年代生まれ)は「1つの会社に依存したくない」と考える傾向が強い
- 「収入を増やしたい」だけでなく、「やりがい」や「スキルアップ」のために副業を始める人が増えている
つまり、副業はもはや「お金のため」だけではなく、キャリア形成の一部として捉えられるようになってきています。
オンライン環境の整備で副業が現実的に
- テレワークやリモートワークが普及し、「通勤しない=時間が生まれる」ようになった
- Zoom、Slack、Notionなどのツールで、場所を問わずチームやプロジェクトに参加できる
- SNSやWebを通じて自分のスキルや知識を簡単に発信・収益化できる環境が整った
このように、副業を実行するための「環境」が整備されたことも、副業容認の後押しになっています。
医療業界にも波及している副業解禁の流れ
医療分野では、以前は「本業に専念すべき」という価値観が強かったものの、近年は以下のような動きが進んでいます。
- 医師や歯科医師の中でも「講師」「執筆」「SNS発信」「経営支援」などを副業とする人が増加
- 開業せずに“複業型”でリスクを抑えた働き方を目指す若手が増えている
- 医療系スタートアップ企業などでの副業・業務委託という選択肢も一般化
結果として、医療人だからこそ持つ知識やスキルを、診療以外にも活かすことが評価される時代になってきています。
副業を通じて得られる経験・視野・人脈は、働く人にとっての“資産”になります。
社会全体がこの考え方を受け入れ始めており、歯科医師もその流れに乗ることで、もっと自分らしいキャリア設計が可能になる時代になったといえるでしょう。
副業型キャリアを選ぶ若手歯科医師が増えている背景
「開業=成功」の時代ではなくなったから
一昔前は、「ある程度経験を積んだら開業する」が王道でしたが、現在は以下の理由で開業を選ばない若手が増えています。
- 初期投資(内装・設備・スタッフ人件費)の負担が大きい
- 開業の競争が激化(特に都市部)
- 借金を背負ってまでリスクを取るより、複数の収入源を持って安定したい
- 働き方に縛られず、自由を確保したい
この結果、「開業以外の道」として副業的な働き方を模索する動きが広がっています。
SNSやWeb発信で“個人の力”を活かせる時代になった
- Instagram、YouTube、note、Xなど、個人が自由に発信し、影響力を持てるプラットフォームが整っている
- 専門知識を一般向けに発信することで「認知度」「信頼」「収入」を得ることができる
- 情報発信が、求人や出版、セミナー依頼につながるなど、“次のキャリア”の起点になり得る
診療に限らず、個人の価値を多面的に広げられる環境が整ってきています。
「1つの仕事に縛られたくない」という価値観の広がり
若手歯科医師は、以下のような柔軟な働き方に価値を置く傾向があります。
- プライベートの時間も大切にしたい
- 家族や趣味、自己投資の時間も確保したい
- 常勤で週5日・フルタイム勤務は重いと感じる
- やりたいことを“試せる”働き方をしたい
副業型キャリアは、こうした価値観と相性が良く、「自分らしく働ける」手段として選ばれやすくなっています。
歯科医師の働き方が“選ばれる側”から“選ぶ側”へ変化している
- 歯科医院数の増加により、勤務医の求人は多数存在
- 非常勤やスポット勤務のニーズも拡大し、時間の使い方を選びやすい環境になってきた
- 「週2回だけ診療」「午後だけ勤務」といったフレキシブルな勤務スタイルが可能になってきた
そのため、「診療は控えめにして、他の活動にも力を入れたい」という働き方が現実的に実現できるようになっています。
「好きなことも仕事にしたい」若手の志向
- 教育や発信、アートやデザイン、ビジネス、ITなど、診療以外にも興味を持つ若手が増加
- 自分のスキルや趣味を生かして、“診療+◯◯”のスタイルを模索する流れが広がっている
- 本業一本では得られないやりがいや達成感を、副業で補っているケースも

「歯科医師+副業」で成功している人の事例
①【YouTube・SNS】で成功した歯科医師
事例: 歯科×YouTubeチャンネル運営
概要:歯科の専門知識を活かし、一般の方向けに「虫歯」「ホワイトニング」「矯正」などの情報を発信。
結果:チャンネル登録10万人超え。広告収益・企業案件で月に100万円以上の副収入。
ポイント:専門性と信頼性が強み。実名や顔出しが信頼感につながっている。
②【自費カウンセリングノウハウを販売】して成功
事例:歯科医院向けセミナー・教材ビジネス
概要:自院での自費成約率が高いことを武器に、同業向けにノウハウを教材化。
結果:オンライン講座やPDF資料を販売。毎月50万〜100万円の安定収益。
ポイント:歯科医師同士だからこそのリアルな悩みに共感され、リピーターも多数。
③【不動産・投資】で成功した臨床医
事例: 歯科医×不動産オーナー
概要:歯科医院の安定収入をベースに、築古アパートを安く購入して再生。
結果:副収入は家賃収入で月に数十万。将来の不労所得にも。
ポイント:歯科医の属性は金融機関からの融資が通りやすく、有利に進められる。
副業よりも「働き方そのものを変える」視点を
「副業を始めたい」という気持ちの裏には、本当は「もっと自分の時間がほしい」「やりたいことに向き合いたい」といった働き方への違和感が潜んでいることも少なくありません。
副業を始めること自体も一つの選択肢ですが、その前に、「今の働き方そのものを見直す」という視点を持つことがとても大切です。
たとえば――
✔ 残業が少ない医院に転職する
✔ 勤務日数を週5から週3〜4にする
✔ 午後から勤務するスタイルにして、午前は自由に使う
✔ 非常勤勤務に切り替えて、複数の医院をかけ持ちする
こうした“時間の設計”を見直すことで、
「副業のための時間」だけでなく、自分の学びや生活そのものにゆとりが生まれます。
副業はあくまで選択肢のひとつ。
本当に自由な働き方を手に入れるためには、
まず“どう働くか”を主体的に考えることが、すべてのスタートになります。
副業OKな歯科医院の見極め方
就業規則・雇用契約に「副業禁止」と明記されていないか確認する
まず最も基本的なのが、就業規則や雇用契約書です。
- 「副業禁止」「他院勤務の禁止」などの条項があるかどうか
- 「法人の許可があれば可」と書かれている場合は、要相談
勤務医契約ではなく、業務委託契約や日給制スポット勤務であれば、副業の自由度は高くなる傾向があります。
院長や経営陣の“働き方”に対する考え方を探る
副業に対して柔軟かどうかは、院長の価値観や方針が大きく影響します。
- スタッフや他の勤務医に副業している人がいるか?
- 院長がSNSやセミナーなど、診療外活動をしているか?
- 面接時に「副業や自己活動に関心がある」と伝えた時の反応は?
「副業=本業をおろそかにする」と考える院長だと、今後の活動がしにくくなる可能性あり。
勤務時間・シフトに融通がきくか?
副業をするには、自由に使える時間の確保が前提です。
- 週の勤務日数が少なめ(例:週3〜4)
- 午後のみ勤務や、曜日限定などが可能
- 急なシフト変更に柔軟な対応をしてくれる
“時間に融通がきく=副業がしやすい”環境。
夕方のみ勤務などを受け入れてくれる医院は、時間設計がしやすいです。
医院外での活動を自然に応援してくれるか?
たとえば…
- SNSでの情報発信や活動に理解がある
- セミナー参加や登壇のための有休やシフト調整に協力的
- 書籍執筆やコラムなどを「すごいね」と応援してくれる雰囲気
副業はあくまで“自己表現”や“キャリア形成”の一環です。応援してくれる空気がある職場は、モチベーションにもつながります。
最終的には「お互いに信頼関係があるかどうか」
副業が許されるかどうかは、ルール以上に信頼関係で決まる部分も大きいです。
- 本業(診療)をしっかりこなす
- チームと良好な関係を築いている
- 自分の活動をオープンにしつつ、医院に迷惑をかけない姿勢を持つ
「副業してても安心して任せられる人」と思ってもらえることが、長く気持ちよく続けるためのカギです。
副業に対する理解がある医院は、都市部を中心に確実に増えています。
特に若手の勤務医を受け入れている医院や、法人経営のところは比較的柔軟な傾向があります。
「副業をする=不真面目」ではなく、
「副業を通じて視野を広げ、自分の成長につなげる」ことを伝えれば、理解を得やすいことも多いです。
まとめ
副業型キャリアの広がりは、単なるトレンドではなく、若手歯科医師の価値観・社会環境・業界構造の変化が重なった結果として生まれています。
「診療だけがキャリアではない」
「自分のペースでキャリアを築く時代」
そんな新しい選択肢として、副業型キャリアがこれからますます注目されていくでしょう。
