
「最近の若手はすぐ帰りたがる」
「もっと責任感を持ってほしい」
そんな声を、歯科医院の経営者や先輩ドクターから聞くことがあります。
一方で、勤務医の立場からはこうした本音も──
「副業や勉強の時間が欲しい」
「働きすぎて、心が擦り切れそう」
「診療後に自分の時間を持つことも大切だと思う」
どちらが正しいという話ではありません。
けれど確かなのは、歯科医師の働き方が“転換期”を迎えているということ。
今、多くの歯科医師が「仕事と人生のバランス」について、自分なりの答えを模索しています。
目次
「早く帰りたい」の奥にある、本当の気持ち
「診療以外の時間も大切にしたい」という価値観
今の若い世代(特に20代〜30代前半)は、「仕事=人生の中心」という考え方よりも、
「仕事は人生の一部であり、プライベートも同じくらい大事」という価値観を強く持っています。
彼らにとっては、
- 趣味の時間
- 家族やパートナーとの時間
- 自分の学びや成長のための時間(副業や勉強)
- 何もしない“余白の時間”さえも、充実した生活の一部
そのため、「早く帰る=怠けている」ではなく、
“自分の人生に必要な時間を確保したい”という、前向きな選択なのです。
「診療だけが歯科医師のすべてじゃない」という考え
これまで歯科医師のキャリアは、「診療スキルを磨くこと」だけが評価軸でした。
ですが最近では、以下のような考えを持つ若手も増えています。
- 教育活動(後輩指導、セミナー)
- 情報発信(SNS、YouTube、執筆)
- 経営やマネジメントの学習
- 医療以外のスキル(英語、IT、マーケティングなど)
つまり、「診療の腕を磨くことは大切。でも、それ以外にも価値のあることがある」という、キャリアの多様性を前向きに捉えているのです。
「働きすぎの上司を見て、反面教師にしている」ケースも
歯科界にはいまだに“長時間労働・自己犠牲が美徳”という雰囲気が残っている医院もあります。しかし、若い世代はそうした働き方に疑問を感じていることも。
- 体を壊すまで働く先輩を見て、自分はそうなりたくない
- 家族との時間が取れず、後悔している先輩を見て学んでいる
- “無理して開業して大変そうな先生”の姿から、違う選択肢を模索している
彼らは、自分の人生を俯瞰して考える力があり、「今のうちから調整しておきたい」というリスクマネジメント的な視点も持っています。
歯科医師も、「医院に忠誠を尽くす」時代から、「自己責任でキャリアをつくる」時代へ。
この流れは、今後ますます加速していくでしょう。
「頑張る」だけでは守れない時代
保険点数の抑制、開業の飽和、SNSやマーケティングの進化…。
歯科業界は大きな変化の中にあり、「診療だけしていればいい」という時代ではなくなりつつあります。そんな中で、
- 自費診療に強い歯科医師
- 情報発信が上手な歯科医師
- 副業や投資で収入の柱を複数持つ歯科医師
など、“診療以外の武器”を持つ人たちが、柔軟にキャリアを切り開いています。
これは、ただ“手を抜く”ことではなく、
「頑張る方向を、広く・深く考える」ことを意味します。

これからの歯科医師の働き方は、どう変わっていく?
「時間に柔軟な勤務スタイル」が選ばれる時代に
- 「午後のみ勤務」「週3日勤務」「早上がり制度」など、自由なシフト制度を導入する医院が人気に。
- 医院側も、「ただ長く働く」より「短時間でも結果を出せる」人材を評価するようになる。
働きながら「+αのキャリア」を育てる流れが加速
診療に加えて、SNSやセミナー活動、教育コンテンツの発信など、歯科医師としての専門性を活かした「もうひとつの顔」を持つ人が増えているのです。 これは単なる副業ではなく、将来の独立や転職、ブランディングにもつながる“キャリアの土台”になります。 時間にゆとりがあればこそ、そのような新しい挑戦にも前向きに取り組めるようになります。
これからの歯科医師の働き方、どう考える? Q&A
そう思われがちですが、今は「自分の時間を大切にしたい」という前向きな選択。意欲や責任感とは別の話です。
はい。教育や発信、経営スキルなど、診療以外の力も今後のキャリアに直結します。専門性の幅が武器になります。
甘えではなく自然な感覚です。自分の将来を考えたときに、無理のある働き方を避けたいと思うのは健全な判断です。
今は「結果重視」の傾向が強まりつつあります。短時間でも成果を出せる人は、十分に評価される時代です。
診療スキルだけでなく、情報発信や副業など自分の強みを広げることも大切。頑張り方は人それぞれです。
まとめ
若手歯科医師は「自分の人生を設計する力」を持っている
「早く帰りたい」という言葉の裏には、「自分の人生をコントロールしたい」「限りある時間を大切に使いたい」という、強くて柔軟な意志があります。
これからの歯科医師の働き方は、「長く働く=立派」ではなく、「どう働き、どう生きたいか」を考えて選べることが、最も重要な力になるでしょう。

