歯科医師の仕事の中でも大きく分類分けをすると、「外来診療」と「訪問診療」に分かれます。以前は、外来診療をメインとしている歯科医院が、お昼休憩を利用して訪問診療をしているという程度でしたが、最近では全く二分化してきています。歯科医師も兼任するというよりは、外来か訪問かどちらかを選ばれるようになっています。
目次
訪問診療のパターン
訪問診療と一言で言っても色々なパターンがあります。
訪問診療の運営
運営には2つのパターンがあります。
1. 歯科医院が独自で訪問診療を運営している。
2. 訪問の専門業者が入っている。
専門業者が入っている場合は、歯科医院の名前は使っているものの、院長もほとんどタッチしていないという場合が多いです。訪問診療の求人情報などが掲載されており、電話をしたら、別の方に電話を回された、もしくはこちらにおかけ直しくださいと言われた場合はその可能性もあります。
しかし働く先生方にとってあまり問題はないと思います。
歯科医院が独自で訪問診療をされている場合でも2パターンに分かれます。
1. 外来診療と訪問診療 両方を兼務する場合。
2. 外来診療と訪問診療のスタッフは全く別で、兼務することはない場合。
色々な面でこの違いは大きく変わります。
外来診療と訪問診療の両方を行う場合は、基本的には外来と同じ勤務時間になると思っておいた方が良いでしょう。本来、訪問だけであれば夕方頃に訪問先から戻ってきて、17時~18時には終了できることも多いのですが、兼務の場合は、訪問診療から戻ってきてから外来診療の方に入るという場合もあります。
訪問診療は終了時間が早いことが一番のメリットと考えておられる方が多いため、この違いは大きなポイントになるかもしれません。
訪問診療での治療内容
訪問診療での治療をどの程度まで行うかという方針も医院によって違います。
1. ほぼ「ケア」中心
2. 必要であれば、出来る限り外来と同じ程度の「治療」を行う。
3. 摂食嚥下なども積極的に取り入れている
ケア程度だと思っていたのに、かなり積極的に治療を行っているという場合もあります。逆に、治療も積極的にやりたいと思っていたのに、ほとんど衛生士のケアばかりだったということもあるでしょう。また摂食嚥下に関しても嚥下内視鏡(VE)を取り入れている医院もあれば、否定的な医院もあります。医院によって考え方や方針があるので、この辺りは直接確認するしかないと思います。
訪問診療の規模
訪問診療に関してどの程度の規模で行っているかも医院によって違います。
1. 訪問診療をメインで行っている歯科医院では、毎日、多数台の訪問車を稼働
されています。
2. 外来診療をメインで行っている歯科医院では、週のうち数日だけ訪問に出て
いるという場合もあります。
毎日稼働している場合は、常勤ドクターの採用もありますが、逆に週のうち数日だけしか訪問診療をしていない医院では、非常勤ドクターしか募集をしていない場合が多いです。もしくは、どうしても常勤を希望される場合は、訪問に出ていない曜日は外来に入って下さいと言われる場合もあるかもしれません。
医院によってどのくらいの訪問をしているのかはわかりづらい部分もあると思います。転職コンサルタントや、医院に確認しないとわからないかもしれないですね。
訪問先
訪問診療は拠点から16キロ圏内と決まっています。また訪問先は大きく分けて、「居宅」と「施設」に分かれます。
「居宅」・・・患者さんの自宅に伺い治療やケアを行います。
「施設」・・・特養(特別養護老人ホーム)・有料(有料老人ホーム)・サ高住
(サービス付き高齢者向け住宅)・グループホームなどがありま
す。施設では一カ所に入居者が集まり治療を行うというスタイル
が多いようです。
基本的には、どちらも行かれているところが多いようですが、関連施設などがある歯科医院は施設訪問が中心になり、その合間に居宅訪問するという場合が多いです。また以前は歯科医院に来院されていた患者さんが高齢になり、居宅訪問をしているという場合は、居宅の方を中心にしている場合も多いようです。
これに加えて、「病院」への訪問をされている場合もあります。
訪問診療の一日の流れ
朝のミーティング
↓
9:00 歯科医院を出発
↓
午前中 施設で診療
↓
移動途中で昼食をとる
↓
午後にもう一件施設を訪問する場合や居宅訪問を行う。
↓
17時頃に歯科医院に戻り、書類作成
↓
18時退社
これが一番ベーシックなスタイルだと思いますが、訪問の規模によって変わってきます。関連施設や病院ばかりで、遠方に行くことはほとんどなく、お昼は事務所に戻ってきて食事をとるという歯科医院もありますし、ドクターにある程度裁量権を与えられている歯科医院での訪問の場合は、スタッフ同意のもと、スケジュールを前倒しにしてお昼休憩はほとんどとらずに、一気に仕事をして早く帰るというようなことが許されている所もあるようです。
ドクターの場合は、訪問診療先に直接行って、書類は施設で作成して、帰りは施設から直帰というスタイルが許されている場合もあります。
外来診療と違って、いろいろなやり方があるので、このあたりも転職コンサルタントか、医院に確認しなくてはわからないかもしれないですね。
訪問診療って大変?
以上にお話ししたように、一言で訪問診療と言っても規模や条件によって違いがあるため「大変さ」の度合いは色々だと思います。ただ、外来とは違う部分もたくさんあります。参考にして下さい。
腰を痛める
これは確かにあるようです。高齢者はうつむきがちなところがあり、思うような態勢がとれない場合も多く、ドクターの方が患者さんの状況にあった姿勢を取らないといけない場合もあります。外来診療でも歯科医師は腰を痛めやすいですが、外来以上に大変な姿勢をとる場合が多いようです。
熱中症になる
施設も居宅も高齢者が快適に感じる室温になっているため、仕事をしている人にとってはかなり暑いそうです。また夏の暑い日に外出をして、居宅を次から次に移動するのも結構ハードです。安定した室温の外来で歯科医院に来られる患者さんを診療するのとは大きな違いがあります。
家族さんや施設スタッフとの関係
訪問診療をするドクターにとってこれは大きな問題です。患者さん自身はあまり理解できない方も多いですが、家族さんに説明をしたり、施設スタッフとやり取りをすることが多いです。施設に訪問をしたい歯科医院はたくさんあるため、少しでも対応が悪いと、施設側も他の訪問歯科医院に変えたいと言われる場合もあるため、一番気を使わなくてはいけないところかもしれません。最近では、コーディネーターがいる歯科医院も多く、家族さんや施設スタッフとのやり取りはすべてコーディネーターが行うという歯科医院も多いです。
スタッフとの関係性
スタッフとの関係性も外来以上に深いといえるでしょう。移動はすべて車でスタッフと一緒という場合が多く、お昼も車内で食べたりする場合もあるため、お互いに嫌だと思うとかなり仕事がやりにくいと思われます。協調性に欠けたり、コミュニケーションが苦手な方にはつらい部分だと思います。
ドクターは一人
基本的にはドクターは1名です。外来のように誰かがフォローをしてくれるわけではないので、新卒や経験の浅い先生には向かないと思います。ケアだけだからと安易な考えをしている方もおられますが、高齢者は外来に来られる健常者とは違い、いつなんどき体調が悪くなるかわからないので予測不能です。何があっても落ち着いて判断できる経験が必要です。
衛生面も色々
きれいな外来とは全く違うことは覚悟して下さい。施設もピンからキリまであるようですし、特に居宅にお伺いする場合も多いため、ここでは具体的には記載できませんが、想像を絶するようなことも多いようです。
訪問診療ドクター Q&A
外来診療は医院で患者を診察するのに対し、訪問診療は患者の自宅や施設を訪れて治療やケアを行うことです。
訪問診療では、ケア中心の場合もありますが、必要に応じて外来と同じ程度の治療を行うこともあります。
訪問診療の一日の流れは医院や規模によって異なりますが、朝のミーティングから始まり、施設や居宅で診療を行い、帰院して書類作成を行い、18時頃に退社することが一般的です。
訪問診療には外来診療とは異なる経験やスキルが必要です。高齢者の特殊な状況に対応できる経験や判断力が求められます。
訪問診療は外来診療とは異なる要素があり、やりがいを感じることができる仕事ですが、その一方で大変さや困難さもあると言えます。
まとめ
如何でしたでしょうか?
外来よりも「お給料が高いから」、「早く終われるから」といった理由で、安易に訪問の仕事を希望される方も多いですが、本当に医療人としての心を持ち合わせている方でないと難しいと思います。
しかしながら、外来よりもやりがいを感じたり、幸せを感じられる仕事でもあります。以上のような状況を理解したうえで、高齢者のお役に立ちたいという方には是非訪問診療のお仕事をお勧めいたします。