就職・転職するにあたって、常勤で働くか非常勤で働くかは大きな選択です。少し前までは主婦や子育て中の女性ドクターがフル勤務できないので非常勤でという選択をされていましたが、今は決してそうとは限らず、非常勤を2カ所掛け持ちで勤務される方も増えて来ています。それぞれに良い面・悪い面がありますので、よく理解した上で自分に合った働き方を選びましょう。
目次
新卒の方に常勤をお勧めする理由
新卒(臨床研修明け)の方でも最近は非常勤の勤務を選ばれる方が増えています。理由は後でご説明しますが、私は新卒の方にはやはり常勤をお勧めしています。自分が治療した患者さんが後日痛みを訴えてこられる場合があります。その時にしっかり自分の目で診ることによって自身が行った治療の悪かった部分を知ることができ、学びにつながるからです。常勤であれば担当制になる場合も多いと思いますが、患者さんを担当で受け持つという事は、責任感を持つことにもつながりますし、治療の予後、経過をずっと診ることが出来るからです。非常勤の場合、自分が治療をした患者さんが後日痛みを訴えてこられても、結局その日に勤務していなければ、違う先生が治療することになってしまい、自身の治療の悪かった部分というのを知ることもなく終わってしまいます。そのため新卒の方であれば常勤で勤務する方が良いでしょう。
また、新卒の場合はまだまだ教えてもらう必要があります。その時に非常勤だと院長やほかの先輩勤務医の方が嫌がることも多いようです。やはり医院によってやり方や考え方がありますので、教える側もやりにくいと思われるようです。
常勤・非常勤のメリット・デメリット
以下に常勤・非常勤のメリット・デメリットを上げてみました。もちろん必ずといえることではないことだけご了承下さい。
常勤のメリット・デメリット
・ 患者を担当制で診ることができ、治療の予後や経過を診ることが出来る。
・ しっかり指導してもらう事が出来る。
・ 社会保険などに加入することが出来る。
・ 固定給で安定した収入を得やすい。
・ 一医院のやり方だけに偏る可能性がある。
非常勤のメリット・デメリット
・ 非常勤を掛け持ちすることによって常勤よりも高い収入を得る場合もある。
・ 色々な医院のやり方を見ることが出来る。
・ 色々な先生と意見交換をすることが出来る。
・ 訪問診療などこれまで経験したことのない分野を経験することが出来る。
・ 自分の治療の予後や経過を診ることができない。
・ 患者への責任感が薄れる。
・ 社会保険などの加入ができない場合もある。
・ 収入が不安定になる場合もある。
これらのメリット・デメリットは、ある人にはメリットであっても、ある人にはデメリットになる場合もあります。また自分にとって今はメリットだけど、5年後にはデメリットになる場合もあります。例えば1年目の先生であれば、担当医制で、自身の治療経過を診ることがメリットになりますが、経験を積んで8年たち、そろそろ開業を考えておられる時期であれば担当医制で自身の治療経過をじっくり診ることよりも色々な医院のやり方を見たり、たくさんの先生と意見交換することの方が重要な場合もあります。このように今の自分には何が必要かによって働き方も変わってくるということです。
非常勤を選ぶ理由
非常勤を選ぶ理由は人それぞれあると思いますが、例えば以下のような事が考えられます。
・ 主婦や子育て中のためフル勤務が難しい。
・ 開業を控えているため時間に余裕を持ちたい。
・ 掛け持ちで働くことによって高収入になる。
では、逆に院長先生が非常勤ドクターを採用する理由を挙げてみます。
・ 患者数が多く、手が回らないため手伝ってほしい。
・ 常勤を採用すると社会保険の加入や賞与など医院の負担も大きくなるので、
非常勤を雇いたい。
・ 手が足りない時間帯だけフォローしてほしい。
・ 本当は正社員を雇いたいが良い人材が見つからないので、非常勤を数人いれ
て賄っている。
医院側は手が足りないため非常勤ドクターを雇うという場合が多いため、基本的には、「非常勤=即戦力」をイメージされています。忙しいから採用しようとしているのに、即戦力にならない人を教育する余裕は無いと考えて頂いて良いと思います。(もちろん絶対ではないことはご理解下さい)
新卒の方に非常勤をお勧めしないのはこういった理由もあります。
非常勤の掛け持ちの方がお給料は高くなるの?
常勤のお給料を日給で換算した金額と、非常勤の日給では確かに非常勤の方が高い場合が多いです。これは、社会保険の負担や賞与などが無い分と思って頂いて良いでしょう。また急募の場合や、夜間・日祝日で人が集まりにくいという理由で通常よりも高い金額提示をされている場合もあります。そのため開業を目標にされている先生で、常勤と非常勤を掛け持ちしたり、高額の案件を効率よく働けばかなりの収入になることは間違いないと思います。
ただ、新卒(臨床研修明け)のドクターで普通なら常勤で働くだろうなと思う人が、非常勤の掛け持ちを希望されることが最近では増えています。もちろん色々な理由をいわれるのですが、院長先生は、高収入狙いだと見抜いています。そのため新卒(臨床研修明け)の非常勤は採用しないという医院もあります。
非常勤勤務で自費を習いたい!
「非常勤で自費を教えて欲しいんです!」と言われた先生がおられました。「非常勤」「自費」「教えて欲しい」どの言葉をとっても院長先生は気を悪くされると思います。なぜなら多くの院長が「歯科医師を一から育てていきたい」と思われています。そのためまずは保険診療を教えて、それが問題なく出来るようになれば少しづつ自費の技術を伝授していきたいと考えておられます。また最近では一から院長先生が教えるというよりは、セミナーなどに行ってもらい、ある程度の基礎を習得したうえで、実践しながら教えていこうという流れになっているようです。
例えば、保険診療がある程度任せられるようになったら、「インプラント100時間コース」でインプラントの技術を習得してもらい、イージーケースの患者さんを担当してもらいながら院長先生がフォローに入るという感じです。このようなケースを何度か経験しながら一人で出来るようになっていきます。
如何ですか? こういった流れを理解頂けば「非常勤で自費を教えて欲しいんです!」という事がどれほど無謀なことかご理解頂けるでしょう。
先ほどもお話したように、「非常勤」に求めるものは即戦力であり、問題なく保険診療をして頂ける方です。(矯正などは別です)逆に、「非常勤」で保険診療をしながら、自費を学ぶ時間はあるのでしょうか? 「自費」を学ぶためにはセミナーなどに参加して技術の習得をしてもらう必要があります。この費用は数年働いて今や保険診療で稼いでくれる一人前になったからこそ、医院も負担してくれようとしているのです。突然転職してきた人にセミナー負担をする医院はないという事です。職場は学校ではありませんので、教えて欲しいのならセミナーにでも行って下さいと言われるでしょう。
訪問診療の非常勤はどう?
非常勤というと、「訪問診療」を思い浮かべる人も多いかと思います。もちろん、訪問診療の常勤もありますが、訪問診療は非常勤で勤務されている方も多いです。基本的に外来よりも終わる時間が早いということで主婦の非常勤というイメージが強いと思いますが、最近では新卒(臨床研修明け)の先生方が訪問診療の非常勤勤務を探されることも増えています。これは外来の非常勤よりも訪問診療の非常勤の方が時給・日給が高いと思われているところもあるようです。たしかに訪問診療の非常勤は時給(日給)がべらぼうに高いという時代もありましたが、最近ではそれほどの高額提示をされることも少なくなっています。
残念ながら、新卒(臨床研修明け)の先生を訪問診療の非常勤で採用する医院は少ないようです。訪問診療は診療内容はもちろんですが、それ以上に、施設関係者やご家族の方とのコミュニケーション力が求められます。その場で緊急の判断を迫られる場合もありますので、経験のある方を採用したいと思われているようです。
主婦や子育て中の女性ドクターの訪問診療はお勧めできます。比較的外来診療よりは早く終われるという事が大きなメリットです。もちろん、診療時間だけではなく、開業を検討されている方で訪問診療を経験したいという方にもお勧めできます。
常勤・非常勤の働き方 Q&A
新卒の方には常勤をお勧めします。治療した患者さんの経過や予後を長期間にわたって見ることができるため、自身の成長と学びにつながるからです。また、経験豊富な先輩医師からの指導を受ける機会も多く、総合的なスキルアップに役立つでしょう。
常勤と非常勤の選択は、就職や転職において非常に重要な要素です。どちらの働き方にもそれぞれの良い面や悪い面がありますので、自身の目標や状況に合わせて慎重に選択する必要があります。
訪問診療の非常勤は、主婦や子育て中の女性ドクターや開業を考えている方にはお勧めです。終わり時間が早く、外来診療よりも時間に余裕が持てることがメリットです。ただし、訪問診療にはコミュニケーション力や判断力が求められるため、経験が必要な場合もあります。
一般的には、非常勤の新卒採用はあまり望まれない傾向があります。医院側は即戦力を求めており、保険診療などを問題なくこなせる先生を採用したいと考えるためです。
非常勤の掛け持ちで高収入を得ることは可能です。特に高額な案件や忙しい時間帯での勤務によって収入が増える場合もあります。ただし、それは経験を積んだ先生や開業を目指している先生にとっての話であり、新卒の方には必ずしも当てはまらないことが多いです。
まとめ
あなたは常勤で働きますか? 非常勤で働きますか? どちらにもメリット・デメリットがあります。スキルアップするために、タイプの違う歯科医院で勤務してみることは何か新しい発見があるハズです。自分自身に合った働き方を考えてみて下さい。