転職相談を受けていると、「自費治療を学びたいので、そういった症例の多いところに転職したいです」と言われることがよくあります。
研修医明けの先生は、保険診療がしっかり学べるところを希望されるのですが、3年ほど経験をされた先生が転職される際には「自費治療を学べるところ」という希望を言われます。
しかしながら自費治療が学べるかどうかというのは、求人票や医院のホームページを見ていてもなかなかわからないのではないでしょうか?
目次
自費治療を学べる歯科医院、どうやって探す?
「自費治療が学べる医院」を探すのはかなり難しいと思います。自費治療の症例がたくさんあるのと、学べるかというのは別物です。
「院長が〇〇専門医」だから自費症例が多い?
院長がインプラント専門医だからインプラント症例が多い。
院長が歯周病専門医だから歯周病の症例が多い。
と狙いをつけられる方も多いです。院長のプロフィールなどを見た患者さんが集まってくる場合もあるので、たしかに一般診療に力を入れている医院よりは症例数は多いかもしれません。しかし、だからと言って勤務医が診療をせずにオペを見学したり、アシストに入れるかというと話は別になります。
実際に歯科医院に話を聞いたところ、やはりホームページなどを見て来られる患者さんは専門医である院長を指名して来られるらしく、習いたての勤務医に任せることは出来ないそうです。となると勤務医はというと、結局院長がオペに入る間、一般診療をして下さいという事になります。実際院長がオペするのを見たことがないという勤務医の声も聞いたことがあります。
それはそうですよね、学校ならお金を支払っているのですから、オペの見学もアシストにつくことも出来るでしょうが、勤務医となるとお給料をもらっている立場ですから、院長がオペをしている間は、他の患者さんはしっかり診療して頂かなくてはいけません。
ということで、自費治療の症例が多い医院や、院長が○○専門医だから、学べるかというと一概には言えないという事になります。実際求人をしている歯科医院の院長に聞いたところ、自費治療は自分がするので、一般診療をしてくれる人を募集しているという場合も多いです。
どうすれば自費治療を学べるの?
働きながら、お給料をもらいながら勤務時間中に教えてもらおうというのはほぼ無理だと思って下さい。以前、非常勤を掛け持ちしている先生が、「自費治療を教えてくれる歯科医院に一日だけ勤務したい」と言われたことがありました。たまに「学びたい」「教えて欲しい」という自分の「意欲」や「やる気」を医院に言われる場合がありますが、「ここは学校ではないから」と院長に返されるのはもっともな話です。
では、どうすれば自費治療を学べるのかという事ですが、それはセミナーに参加する方法を取られるのがベストだと思います。歯科医師の自費治療のセミナーとなるとかなり高額になります。そこで求人票に「セミナー費用全額負担」「セミナー費用一部負担」という一文が重要になるということです。
しかしながら、当然そこには条件が付いてくることも多いでしょう。「〇年勤務して頂いた先生には・・・」「〇年は勤務して下さい」というようにです。
以前、私が担当した先生は、「保険診療が一通りできるようになったので、自費治療を学びたい」という希望がありました。結局、ある歯科医院に入職が決まり、入職と共に「インプラント100時間コース」を医院の費用負担で受講することになりましたが、結局「5年は勤務して下さい」という条件が付きました。もちろん先生は、インプラントのスキルを身につけられ、医院にも継続して勤務されました。
「セミナー受講後、実際経験を重ねたい」という場合
「前職の時にセミナーは受講しました。なのでもっと自費治療が多い歯科医院で勤務をしたいです」このような希望での転職は、スキルアップ転職になります。十分に医院に貢献できる一般診療をしながら、少しづつ自費治療の経験を増やしていかれるのがいいでしょう。ここで問題になるのが、少しづつでも自費治療の経験を積める症例があるのかという事です。
実際、若い先生に聞いた話ですが、ある医院で費用を全額負担してもらってインプラントのセミナーを受講しましたが、結局医院にはインプラントを希望される患者さんはほとんど来られないため、実際にインプラント症例の経験を積むことができないという話でした。もしかしたら、歯科医師の採用がなかなかできず、セミナー費用を負担しますよという条件で採用したのかもしれないですね。
例えばどのように経験を積んでいくかということですが、医院によっていろいろあると思いますが、以下のような話を聞いたことがあります。
自分で患者さんにインプラントの説明をして、患者を獲得する。
これは結構難しいです。経験を重ねると自信というものがついてくるので説明もわかりやすくなり、それによって患者さんの気持ちを動かせるのですが、経験を重ねるまではなかなか獲得するのが難しいようです。ご自身の知り合いなどにお願いをして経験を積むことから勧められる医院もあります。もちろん、自分で獲得した患者さんに対しては自分が担当となりますが、オペの際には院長などにフォローしてもらいながら経験を積むという形になります。
患者を配当してもらう。
カウンセリングを担当する人がいる医院では、その人がインプラントの患者を獲得し、可能な歯科医師に配当するというスタイルを取られているところもあります。インプラントの経験が浅い先生の場合は、少し価格を下げることによって患者さんに承諾を得て、院長のフォローのもとオペを進めるというスタイルです。セミナーを終了した歯科医師に対しては、初めの数症例はこのようにして配当をして経験を積めるようにされている医院もあります。
以上は一例です。医院によっていろいろなやり方をされていると思います。セミナー受講によってスキルは身についたものの、その後どのように経験を積んでいくのかなど、不安なところは医院に質問すればいいと思います。
自費治療を学びたいQ&A
経験を積む方法は医院によって異なりますが、勤務時間中に学ぶというのは大変難しいと思います。自費症例が多いと症例検討などに立ち会えることも多いですが、実際インプラントなどを学びたい場合は、まずはセミナーに行くことをお勧めします。
院長が○○専門医であれば自費治療の症例が多い可能性もあります。ただ症例数と自費治療を学べるかどうかは異なります。自費治療は院長が対応し、勤務医はその間保険診療を対応するという場合もあります。
セミナーに参加することは自費治療の学び方の一つです。歯科医師の自費治療セミナーは高額になる場合もありますが、求人票にセミナー費用の一部または全額負担と明記されている医院を探すと良いでしょう。
セミナー受講後、自費治療の経験を積むためには、医院のスタイルや条件によります。医院によっては配当制度や院長のフォローなどがあり、少しずつ経験を積む機会を提供してくれる場合もあります。
自費治療を学ぶためには、自身の意欲ややる気が非常に重要です。自主的に情報収集し、積極的に学ぶ姿勢を持つことが大切です。また、自費治療の経験を積むためのチャンスを医院で積極的に探し、自ら進んで取り組むことも必要です。
まとめ
いかがでしたでしょうか? 単に自費治療を学びたいというだけで転職先を見つけるのは難しいです。新卒から保険診療を学びたいというのとは違って、大変幅が広くなるからです。コンサルタントに聞くなどして実際にどのように自分が経験を積んでいけるのかを想像してみましょう。